大判例

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広島高等裁判所岡山支部 昭和28年(ネ)109号 判決

控訴人は原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し金六七〇円を支払え。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴指定代理人は本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とするとの判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、

控訴人は

(一)  岡山市上伊福八一〇番地宅地四八坪七合は控訴人の所有であつたけれども、すでに訴外黒住たねに譲渡し所有権移転登記手続を完了している。

(二)  のみならず右宅地に対する税金はすでに別に支払ずみである。

(三)  被控訴人主張の岡山市上伊福八一一番地上家屋番号一〇一二番建坪三三坪四合六勺は現存しない。

(四)  被控訴人が主張する建物は或は岡山市上伊福字十八、八一一番地に存する。

第一番

一、木造瓦葺二階建本屋   一棟

建坪 二階坪共    各五坪

附属建物瓦葺      一坪

第二番

一、木造瓦葺平屋建片庇廊下 一棟

建坪          一坪

第三番

一、木造瓦葺平家建厠    一棟

建坪          五合

の建物を指称しておるのかも知れないが、右建物は訴外黒住たねの所有であつて、同人が昭和八年に所有権保存登記をなしておるのであるから控訴人に無関係のものであつて控訴人に課税せられるいわれはない。

と述べ、

被控訴人指定代理人は

(一)  被控訴人が控訴人に本件固定資産税を賦課したのは

(イ)  岡山市上伊福八一〇番地宅地四八坪七合(旧賃貸価格二四円三銭)

(ロ)  岡山市上伊福八一一番地家屋番号一、〇一二番建物(旧賃貸価格一六四円)

一、木造瓦葺二階建居宅    一棟(別紙図面E)

建坪        一〇坪四合

二階       八坪三合六勺

一、木造瓦葺平家建居宅    一棟(同D)

建坪        一一坪九合

一、木造瓦葺平家建納屋    一棟(同F)

建坪         一坪八合

に対してである。もつとも右八一一番地上には現在訴外黒住俊夫所有の

一、木造瓦葺平家建居宅    一棟(別紙図面C)

建坪        三二坪六合

一、木造瓦葺平家建倉庫    一棟(同A)

建坪         五坪九合

一、木造瓦葺平家建居宅    一棟(同B)

建坪         七坪八合

が存在しているけれども、これに対し控訴人に課税していないことはもちろんである。

(二)  控訴人の右主張(四)のように昭和八年訴外人名義で建物所有権保存登記がなされていることは認めるけれども、家屋台帳に登載されていないから、同人に対しては右建物の固定資産税を賦課していない。なお従前は家屋台帳と登記簿との所有者は必ずしも一致しないことがあり、ただ所有者が異動した場合には市町村長に申告し家屋台帳の訂正をしていたけれども、その手続もしないで、登記簿と家屋台帳の所有者と相違することを主張するだけでは被控訴人の家屋台帳を訂正する方法はなかつたが、現在では家屋台帳の所有者を訂正するには新旧所有者連署の上証拠書類を添附して所有者誤謬訂正申請書を提出することによつて家屋台帳を訂正するのであり、被控訴人は控訴人に対しその手続をなすように指示したが控訴人はこれに応じないのである。

(三)  前記(イ)の宅地についても所有権移転登記のなされていることは認めるが右登記手続は昭和二八年一月二〇日であるから本件税金の賦課には何等の影響を及ぼさない。

(四)  昭和二六年度第二期分の前記(イ)の宅地に対する固定資産税はすでに別に納付ずみであるとの点は否認する。と述べた外は原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する(証拠省略)。

三、理  由

被控訴人が控訴人に対し昭和二六年度分固定資産税を賦課し、同年六月一七日頃同年度第二期分の固定資産税、税額六七〇円の徴税令書を控訴人住所に送達し、控訴人は同年七月二〇日頃右固定資産税として金六七〇円を被控訴人に納入したことは当事者間に争がない。

控訴人は右固定資産税の対象となるべき土地或は家屋を所有していないのであるから被控訴人の控訴人に対しなした固定資産税の賦課処分は無効であると主張するので考察する。

市町村が普通税として課する固定資産税は地方税法第三四三条、第三五九条によれば課税すべき年度の初日の属する年の一月一日を基準として固定資産の所有者に課するものであるが、右に云う所有者とは右基準日に土地又は家屋について土地台帳又は家屋台帳に所有者として登録されている者を指称するのである。而して当裁判所が真正に成立したと認める乙第一、三号証(土地台帳謄本)、同第二、四号証(家屋台帳謄本)と本件口頭弁論の全趣旨を併せ考えれば、昭和二六年一月一日現在において岡山市大字上伊福字十八、八一〇番宅地四八坪七勺及び同所八一一番地家屋番号一〇一二番住家床面積三二坪四合八勺(木造瓦葺二階建居宅一棟、建坪一〇坪四合、二階坪八坪三合六勺。木造瓦葺平家建居宅一棟、建坪一一坪九合。木造瓦葺平家建納屋一棟、建坪一坪八合)が控訴人の所有として土地台帳又は家屋台帳に登録されていることが認められる。

控訴人は前記家屋は現存しないと主張するけれども控訴人はこの点について何等立証していないのであるから前記認定の如く家屋台帳に登録されている以上前記家屋は現存するものと推認するのが相当である。

然らば被控訴人が控訴人に対し前記宅地及び家屋の所有者として昭和二六年度分固定資産税の賦課処分は当然無効のものとなすことはできない。

なお控訴人が前記宅地についてすでに訴外黒住たねに所有権移転登記手続を了しておることは当事者間に争のないところであるけれども被控訴人はその移転登記をなしたのは昭和二八年一月二〇日であると主張し被控訴人は右事実を明かに争わないから自白したものと看做すべきところ右移転登記後でなければ土地台帳の所有名義が変更されないことは土地台帳法第四三条の二により明であるから本件課税処分には何等影響がないこと明かである。

又右八一一番地上の家屋(但しその構造坪数においては相違があるけれども)について訴外黒住たねが昭和八年所有権の保存登記をなしておることは当事者間に争のないところであるけれども、控訴人及び訴外黒住たねにおいて不動産登記法及び家屋台帳法所定の手続をなして家屋台帳の訂正を求むべきであり、前記家屋台帳に基いて本件課税のなされることが前記の如くなる以上被控訴人のなした課税処分を争うことは許されないのであつて、いわんや右課税処分を当然無効ならしめるものではない。控訴人は前記宅地に対する税金は昭和二六年七月二〇日以前においてすでに支払ずみであると主張するけれども乙第三号証のみを以てしては右事実を認めることができない(右乙第三号証の作成月日を控訴人が証拠によつて明かにするのでなければ同号証の『済』∥の記載によつて前記日時当時までに第二期分の税金が支払われておることを認めることはできない。もし前記日時以後に作成せられたものであれば控訴人は右六七〇円を支払つておるのであるから、支払ずみの事実を被控訴人の吏員が証明するのは当然である)。

そうすると控訴人の本訴請求を棄却した原判決は正当であるから民事訴訟法第三八四条、第八九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 三宅芳郎 林歡一 浅賀栄)

(別紙省略)

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